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<ノベル>
ここは、杵間山。
リオネとさおり、香玖耶・アリシエートそして、コーター・ソールレットの鋼鉄の右腕が蒼い鳥の探索をしていた。
「この調子で、蒼い鳥は見つかるのであろうか?」
コーターの右腕が皆に問いかける?
「ちょっと、調子の狂うこと言わないでよ!大丈夫、蒼い鳥はきっと見つかるわ、ねっ、さおり、リオネ」
「はい!きっとお姉ちゃんの元に連れて行くんだから!」
「うん、そうだね。リオネも頑張る!きっと蒼い鳥を見つけるんだよ」
さおりとリオネも力強く頷く。
「ほらね、お嬢さん達は全然やる気を無くしてないわ。それともあなただけ、諦める?」
そう、香玖耶に言われて、コーターの右腕は掌で頭を垂れる様にして。
「すまなかったで、ござる。拙者も必死になって探すでござる。幸せの蒼い鳥を!」
そう言ってコーターの右腕は、木の上に飛び幸せの蒼い鳥を探すのだった。
「コーターはアレで大丈夫ね。私達も続けて探しましょう」
「はい!」
「うん♪」
香玖耶の声に二人も大きく頷く。
一生懸命な二人を見ながら、香玖耶には一つの懸念があった。
リオネのことだ。
元気に振る舞っている。
みんなの役に立ちたいと願っている。
そんな彼女は、何処か思い詰めている様にも見える。
今回の依頼。
姉妹も心配だったけど、リオネのことも心配だった。
だから手伝おうと思った。
リオネの笑顔が見れる様に。
「香玖耶ちゃーん、こっちだよー」
草むらからリオネの声がする。
「待ってよ、すぐ行くから」
リオネの声に香玖耶も決意を込めて答えるのだった。
所変わりまして、銀幕市市内の病院。
「……さおり」
その傍らに座って居るのは、市長秘書の上井 寿将だ。
「妹が心配なら、何で妹に心配かけるんだ?」
「心配かけたい訳じゃない!……ただ不安なのよ」
そんな話をしていると廊下から、がしゃんがしゃんと歩く物音が聞こえてくる。
廊下から『キャー』『キャー』と悲鳴も聞こえてくる。
しおりの部屋の前で止まった。
そしてドアが開くと西洋甲冑の上からナース服を着たコーターが現れた。
「コーター、お前何やってるんだ!」
寿将が怒鳴りつける。
「拙者は怪しいものではない。ただの看護師だ。手術前でスーパー心配性になっていると聞いて、見舞いに来たのだ。座ってもいいか?」
寿将の話を聞いているのか聞いていないのか、寿将を無視して寿将が座っていた椅子に座る、コーター。
諦めたかの様に壁にもたれかかる寿将。
「話を聞いたのだが、しおり殿は『蒼い鳥』の話が大変お好きだとか?」
「ええ、好きよ……悲しいくらいに」
しおりが唇を噛んで下を向く。
「それでは、しおり殿あの話に続きがあるのは、御存知か?」
「……いいえ、知らないわ」
コーターの質問に首を横に振るしおり。
「実はのあの話には続きがあってだな……蒼い鳥はあの後姉妹の元から逃げてしまったのだ」
「……そんな」
衝撃の事実に口に手を当てるしおり。
「だがな、じゃあ姉妹はメガ不幸なのか?そんな事はない!」
コーターが続ける。
「幸せとは、鳥かごの蒼い鳥のように初めからウルトラ近くにあるものだ。ただそれに気づくか否かの違いだけなのだ。しおり殿にも、幸せの蒼い鳥が居るではないか。気付かぬのか?幸せの蒼い鳥の様にそなたの幸せを願ってくれる人が居るのではないか?」
そう聞かされて少女は、また俯く。
「そなたには、もう、優しい蒼い鳥が居るのでは無いかのう」
しおりは、黙ってシーツの裾を握りしめるのだった。
一方その頃、主婦の情報は侮れないと、スーパーまるぎんで情報収集をして、映画の『蒼い鳥』が実体化していると言われた、林に向かった香玖耶一行は必死で蒼い鳥を探していた。
この広い林の中ではなかなか見つからない、そこで香玖耶は精霊の力を借りることにした。
「何万キロも見通す鷹の目よ、実体となりて我が力となりたまえ」
香玖耶が呪文を唱えると大気で出来た様な鷹が香玖耶の肩にとまる。
「お願い、私の精霊!彼女たちの願いの為なの蒼い鳥を見つけて」
香玖耶は精霊との視界同調の為、目をつぶる。
さおりとリオネも隣で掌を組み祈りを捧げている。
コーターの右腕の願いも彼女たちと一緒だ。
その時!
「居た!」
香玖耶が走り出す。
つられてさおりとリオネも走り出す。
コーターの右腕も全速力だ。
そしてその先の一本杉に居た。
蒼い鳥が。
その艶やかな青い羽根は美しく宝石の様だ。
「とりあえず、見つけたわね。捕まえなきゃ」
香玖耶が言うと、
「それでは、拙者が行こうではないか。拙者の鎧の空洞部分に鳥の餌を入れて欲しいでござる。腕の中に入ってしまえば捕まえたも同然であろうよ。メガ期待していて欲しいでござるよ!」
コーターの右腕が自信を持って発進する。
コーターの右腕はゆっくりと警戒されない様に、蒼い鳥に近づいた。
そしてその距離が数cmになった時、蒼い鳥が自ら、コーターの右腕に入っていった。
その瞬間コーターは、腕の関節部分のパーツを閉じ、蒼い鳥を捕まえるのに成功したにだった。
「ギガやったのだ♪」
意気揚々と仲間達の元へ戻っていくコーターの右腕。
その間もコーターの腕の中では蒼い鳥がピーチク鳴いている。
「良く、やったわね。これで蒼い鳥を連れて行けるわ」
香玖耶も胸を撫で下ろす。
その時だった。
「……可哀想」
さおりの呟きだった。
「こんな風に捕まってちゃ、入院しているお姉ちゃんと一緒だよ。大空を飛べない……」
「……さおりお姉ちゃん……」
リオネが心配そうにさおりを覗き込む。
「でも。お姉ちゃんに蒼い鳥を連れてくるって約束したし、一つだけお願い聞いてもらおう」
さおりは、そう言うとみんなを見回した。
数刻経った、しおりの病室。
コーター(本体)と寿将が病室でしおりの様子を見ていた。
日も暮れ始め、妹のことが心配になってきた、しおりは自分を責め始めていた。
なんて、浅はかなことを妹に言ってしまったんだろう。
『自分が死ぬだなんて』
ただ、自分が不安になっていただけなのに当たり散らしてたなんて。
後悔で涙がにじんでくる。
そんな時、廊下から慌ただしい走る音が聞こえて来た。
そしてドアが開いた。
「お姉ちゃん!」
「さおり!」
直ぐさまベッドで抱き合う二人。
「お姉ちゃん、あのね、蒼い鳥、居たよ……」
「それならいいのよ、さおり。幸せを運んでくるのは蒼い鳥だけじゃない。私にとっては、さおりあなたが私の蒼い鳥よ」
笑顔でしおりがさおりに言う。
それを聞いて、さおりが満面の笑みを浮かべる。
「でもね、本当に蒼い鳥、居たんだよ。捕まえちゃうと可哀想だから幸せのお守りだけもらって来たの」
そう言ってさおりが差しだしたのは、綺麗に輝く蒼い鳥の羽一枚。
「……綺麗」
「お姉ちゃんの手術が成功します様にって、一枚だけもらってきたの」
その優しい妹を思うとしおりは涙が出てきた。
「凄い綺麗な鳥だったんだよ。病気が治ったらお姉ちゃんも一緒に見に行こうよ。ねっ♪」
リオネもベッドによじ登り言う。
「うん…うん……」
しおりは笑顔で泣きながら返事をする。
「よく、あの子をこれだけ前向きに出来たものだね」
「拙者、誠心誠意MAXに思いの丈をぶつけたのだ」
香玖耶の問いかけにコーターが胸を張って答える。
そんなコーターの右腕は既に装着されているが微妙に鳥臭い。
「それじゃあ、前向きになれたことだし、ちょっとの間オシャレして、庭の空気でも吸いに行こうよ。今なら夕焼けがとっても綺麗だよ♪」
香玖耶がしおりに言うと、
「そうだね、お姉ちゃん。パジャマばっかりじゃ駄目だよ。ちょっとだけオシャレして散歩しよう。そして病気が治ったら、毎日一緒に出かけようね」
「うん♪」
心からの笑顔の返事だった。
夕暮れの帰り道。
長い影と短い影。
「ひさちゃん。リオネ、お役に立てたかな」
「あの笑顔見たろ。大丈夫だって」
「心配だったら、また見舞いに行ってやれ」
「うん!そうする♪その時は、ひさちゃんも一緒に来てね」
「へいへい、分かったよ」
「やっぱり、ひさちゃん優しいね」
「……うるせい」
夕暮れの帰り道。
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クリエイターコメント | はい、冴原です。 こんにちは。 この度は、本当に納品が遅れまして大変申し訳有りません(土下座)。 体調不良とかがあったんですが、ここまで、お待たせすることになるとは(汗)。 とりあえず、リオネのお手伝いも無事すみました。 お茶会あとの納品ですみませ〜ん。
誤字脱字、ご要望、ご感想等ございましたら、メールして頂けると嬉しいです。 今後の参考にさせて頂きます。
この度はご参加、大変有り難うございました。 |
公開日時 | 2008-07-05(土) 10:20 |
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